2015年3月20日金曜日

世界陸上女子マラソン代表選考問題 別視点での整理

3月11日に世界陸上マラソン代表が発表されました。

男子はある程度予想された順当な選出となりましたが、
女子は、横浜国際女子マラソンで優勝した田中智美選手がはずれ、大阪国際女子マラソン3位の重友梨佐選手が選出されるという波乱がありました。

今までも、実績のある選手を選ぶのか、選考会で結果を残した選手を選ぶのかで、もめてきました。しかし、最終的には、陸連の判断が正しく、選出された人が五輪で好結果を残すことが多かったです。

ただし、今回の選考については、いくつか問題点があったと思いますので、整理したいと思います。


  • 代表発表記者会見時の選考の説明に矛盾


代表発表の記者会見で日本陸連は、田中選手を選ばなかった理由として、2時間22分30秒を目指す走りをしていなかった。横浜の出場選手のレベルが低かった旨をあげたことによって、多くの反論を招きました。

この件に関しては、川内優輝選手も言及されているように、前半積極的に走ることは誰でもできることで、むしろマラソンは後半いかにペースを落とさず走り切れるかが大事だと思いますが、前半と後半で田中選手は3分差ですが、重友選手は4分タイムが悪くなっています。

ペースメーカーも2時間22分30秒を目標に設定されておらず、出場選手のレベルも選手が決められるものでなく、全く理不尽で、後出しジャンケン的な内容で、納得いく説明になっていませんでした。

川内 女子マラソン選考で持論「優勝して選ばれないというのは…」(スポニチ)


世界陸上代表
男子
○東京 7位 今井 正人 (トヨタ自動車九州) 2:07:39  ナショナルチーム
びわ湖4位 前田 和浩 (九電工) 2:11:46 ナショナルチーム
福岡 4位 藤原 正和 (Honda) 2:09:06
‐‐‐
落選
 東京 9位 佐野 広明 (Honda) 2:09:12

女子
名古屋3位 前田 彩里(ダイハツ)2:22:48  ナショナルチーム
名古屋4位 伊藤  舞(大塚製薬)2:24:42  ナショナルチーム
大阪 3位 重友 梨佐(天満屋)  2:26:39  ナショナルチーム
‐‐‐
落選
 横浜1位   田中 智美 (第一生命)2:26:57  ナショナルチーム
アジア大会2位 木﨑 良子(ダイハツ)2:25:50   ナショナルチーム


  • 選考会の成績よりも実績重視の選考が浸透されていない

ただし、今回からナショナルチームメンバーが優先的に選考されるという規定が入りました。したがって、必ずしも選考会で日本人トップにならなくても、ナショナルチームメンバーの中で上位の成績を収めれば、代表選手されることになります。

今回、男子は、その規定で前田選手はびわ湖で2時間11分台とタイムはふるいませんでしたが選出されました。

女子の重友選手と田中選手は、ナショナルチームメンバーですので、もし、陸連が会見で、
選考会の内容以外に過去の実績を重視したとか、暑さへの適性など考慮した等の

説明があれば、今回の選出も納得がいくのですが、その点は言及されませんでした。

(ただし、重友選手は2012年ロンドン五輪、2013年北海道マラソンなど世界大会や夏の大会では好成績を残していませんので、必ずしも重友選手が有利とも言えません。)

いろいろ、不可解な部分が残りますが、実績重視であれば、どの点を選考ポイントにしているか、陸連は説明するべきだったでしょう。


  • 世界陸上北京大会の代表選考基準のミス(アジア大会)

4年前は、世界陸上の代表は1カ国5人ということもあり、アジア大会の成績も、金メダルを獲らなくても考慮されて、男子は北岡幸浩選手がアジア大会銀メダルで、世界陸上の代表に選ばれました。

しかし、今回は、アジア大会金メダル以外は、選考対象外となりました。
そのアジア大会で、女子は、木﨑 良子選手が名古屋ウィメンズで優勝したキルワ選手に13秒差の2位に入りました。前田選手はキルワ選手と40秒差でしたので、それよりも僅差でした。

さらにタイムは、2時間25分台で、重友選手より上回るタイムです。もし、アジア大会の日本人1位も選考対象にすれば、確実に木﨑選手が選出されたことになったでしょう。

2014アジア大会女子マラソン
1 2:25:37 ユニスジェプキルイ・キルワ (バーレーン)
2 2:25:50 木﨑 良子(ダイハツ)

2015名古屋ウィメンズマラソン
1 2:22:08 ユニスジェプキルイ・キルワ (バーレーン)
3 2:22:48 前田 彩里(ダイハツ)


一方、男子も、金メダルはなりませんでしたが、松村選手、川内選手は、モンゴルのバトオチル選手には、勝ちました。一方、今回、代表に選出された福岡国際の藤原選手、びわ湖毎日の前田選手は、バトオチル選手に僅差ですが負けています。
この場合も、もし、アジア大会日本人1位を選考対象としていれば、松村選手が選ばれていた可能性がありました。(東京マラソンで振るわなかったのは残念でしたが。)

2014アジア大会ン男子マラソン
1 2:12:38 アリ・ハサン・マハブーブ (BRN)
2 2:12:39 松村 康平 (三菱重工長崎) 
3 2:12:42 川内 優輝 (埼玉県庁)
4 2:13:21 セルオド・バトオチル (NTN) 

2014福岡国際マラソン
1 2:08:22 パトリック・マカウ (ケニア) 
2 2:08:48 ラジ・アセファ (エチオピア) 
3 2:08:50 セルオド・バトオチル (NTN) 
4 2:09:06 藤原 正和 (Honda) 

2015びわ湖毎日マラソン
1 2:09:08 サムエル・ドゥング (KEN)
2 2:11:10 ダニエル・メウッチ (ITA) 
3 2:11:18 セルオド・バトオチル (NTN) 
4 2:11:46 前田 和浩 (九電工) 


  •  ナショナルチームのメンバーの選考基準が不明確
今後、リオ五輪に向けては、実績重視のナショナルチームメンバー優先の選考をするとして、未だはっきりしないのが、ナショナルチームメンバーに入るための条件がはっきりしないことです。

男子では、2013年以降の記録重視で、2012年ロンドン五輪代表の藤原新選手、山本亮選手、そして、2013年世界陸上代表の藤原正和選手といった複数回2時間10分を切ったことがあるランナーがナショナルチームに選ばれていません。一方2時間11分台の記録ですが、期待の若手ということで宮脇選手が選ばれています。

女子では、実績のある野尻あずさ選手、那須川瑞穂選手が選ばれていない一方で、


2012年のロンドン五輪以降、記録を出せていない重友選手が選出されているなど、基準がはっきりしません。

リオ五輪と直結するだけに、どのような成績だったら、ナショナルチームメンバー入りするのか、条件(フルマラソンのタイム、国際大会の成績、ハーフマラソンのタイム 等)を明確にしておくべきだと思います。

そうしないと、さらなる混乱が生じる気がします。


2014年度ナショナルチームメンバー

男子
中本 健太郎 (安川電機) 
堀端 宏行 (旭化成)
川内 優輝 (埼玉県庁) 
前田 和浩 (九電工) 
松村 康平 (三菱重工長崎) 
以上マラソンの日本代表経験あり====
今井 正人 (トヨタ自動車九州)  初代表
====
石川 末廣 (Honda)
黒﨑 拓克 (コニカミノルタ)
小林 光二 (SUBARU)
酒井 将規 (九電工) 
佐々木 悟 (旭化成)
宮脇 千博 (トヨタ自動車)

女子
野口みずき (シスメックス) 
福士加代子 (ワコール)  
伊藤  舞 (大塚製薬) 
木﨑 良子 (ダイハツ) 
重友 梨佐 (天満屋)  
早川 英里 (TOTO) 
以上マラソンの日本代表経験あり====
前田 彩里 (ダイハツ) 初代表
====
田中 智美 (第一生命) 
渡邊 裕子 (エディオン) 



********************************
第15回世界陸上競技選手権大会(2015/北京)代表選考


男子

(1)内定条件 第17回アジア競技大会(2014/仁川) の優勝者
→ 該当者なし
2位 松村 康平 (三菱重工長崎) 2:12:39
3位 川内 優輝 (埼玉県庁)  2:12:42

(2)選考条件 対象者

② 福岡国際マラソン 日本人1位〜3位
4位 藤原 正和 (Honda) 2:09:06
5位 足立 知弥 (旭化成) 2:09:59
7位 高田 千春 (JR東日本) 2:10:03

③ 東京マラソン 日本人1位〜3位
7位 今井 正人 (トヨタ自動車九州) 2:07:39 ナショナルチーム
9位 佐野 広明 (Honda) 2:09:12
11位 五ヶ谷 宏司 (JR東日本) 2:09:21

④ びわ湖毎日マラソン 日本人1位〜3位
4位 前田 和浩 (九電工) 2:11:46 ナショナルチーム
5位 野口 拓也 (コニカミノルタ) 2:12:29
8位 米澤 類 (中国電力) 2:14:13

⑤ 別府大分毎日マラソン 日本人1位
2位 門田 浩樹 (カネボウ) 2:10:46

※2時間06分30秒以内で走ったランナーが、優先的に選考
複数走ったランナーは、一回目のレースが選考対象
ナショナルマラソンチームメンバーが優先的に選考

ナショナルマラソンチームメンバー
石川 末廣 (Honda)
今井 正人 (トヨタ自動車九州) 東京7位
川内 優輝 (埼玉県庁) アジア大会3位
黒﨑 拓克 (コニカミノルタ)  東京18位
小林 光二 (SUBARU)  東京 欠場
酒井 将規 (九電工)  東京 欠場
佐々木 悟 (旭化成) びわ湖9位
中本 健太郎 (安川電機) 福岡12位 別大欠場
堀端 宏行 (旭化成)
前田 和浩 (九電工) びわ湖4位
松村 康平 (三菱重工長崎) アジア大会2位 東京25位
宮脇 千博 (トヨタ自動車)


女子

(1)内定条件 第17回アジア競技大会(2014/仁川) の優勝者
→ 該当者なし
2位 木﨑 良子(ダイハツ)2:25:50 
4位 早川 英里(TOTO) 2:33:14

(2)選考条件 
⑤ 2014 北海道マラソン(2014/北海道)日本人1位
1位 野尻あずさ(ヒラツカ・リース)2:30:26

② 第6回横浜国際女子マラソン大会(2014/横浜)日本人1位〜3位
1位 田中 智美 (第一生命)2:26:57 ナショナルチーム
3位 岩出 玲亜 (ノーリツ)2:27:21 
5位 野尻あずさ (ヒラツカ・リース) 2:28:54

③ 第34回大阪国際女子マラソン大会(2015/大阪)日本人1位〜3位
3位 重友 梨佐(天満屋)  2:26:39 ナショナルチーム
4位 渡邊 裕子(エディオン) 2:28:36 ナショナルチーム
5位 城戸智恵子(キヤノンAC九州)  2:29:08

④ 名古屋ウィメンズマラソン 2015(2015/名古屋)日本人1位〜3位
3位 前田 彩里(ダイハツ)2:22:48 ナショナルチーム
4位 伊藤  舞(大塚製薬)2:24:42 ナショナルチーム
5位 竹中 理沙(資生堂) 2:28:09

※2時間22分30秒以内で走ったランナーが、優先的に選考
②、③、④を複数走ったランナーは、一回目のレースが選考対象
ナショナルマラソンチームメンバーが優先的に選考

ナショナルマラソンチームメンバー
伊藤  舞 (大塚製薬) 名古屋4位
木﨑 良子 (ダイハツ) アジア大会2位 名古屋欠場
重友 梨佐 (天満屋)  大阪3位
田中 智美 (第一生命) 横浜優勝
野口みずき (シスメックス) 不出場
早川 英里 (TOTO) アジア大会4位 名古屋10位
福士加代子 (ワコール)  不出場
前田 彩里 (ダイハツ) 名古屋3位
渡邊 裕子 (エディオン) 大阪4位

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マラソンの記録

【フルマラソン】

◆男子世界記録 2時間00分35秒 ケルビン・キプタム(ケニア) 2023年10月 シカゴマラソン (2分51秒5/km)

◆男子日本記録 2時間04分56秒 鈴木 健吾 2021年2月 びわ湖毎日マラソン(2分57秒7/km)

◆女子世界記録 2時間11分53秒 ティギスト・アセファ (エチオピア) 2023年9月 ベルリンマラソン (3分08秒/km)

◆女子日本記録 2時間19分12秒 野口 みずき 2005年9月 ベルリンマラソン (3分18秒/km)

◆自己記録  3時間37分32秒 2013年12月 青島太平洋マラソン(5分09秒/km)


【100km】

◆男子世界記録 6時間09分14秒 風見 尚 (日本)  2018年6月 サロマ湖100kmウルトラマラソン (3分42秒/km)

◆女子世界記録 6時間33分11秒 安部 友恵 (日本) 2000年6月 サロマ湖100kmウルトラマラソン (3分56秒/km)

◆自己記録 12時間13分41秒  2009年6月 サロマ湖100kmウルトラマラソン(7分20秒/km)

記録

【ハーフマラソン】
◆男子世界記録
 57分31秒 ジェイコブ・キプリモ(ウガンダ) 2021年11月(ポルトガル・リスボン)(2分43秒6/km)
◆男子日本記録 1時間00分00秒 小椋 裕介 2020年2月(香川丸亀国際ハーフ)(2分50秒6/km)
◆女子世界記録 1時間02分52秒 レテセンベト・ギデイ(エチオピア)2021年10月スペイン・バレンシアハーフマラソン (2:58.8/km)
◆女子日本記録 1時間06分38秒 新谷仁美 2020年1月 米国・ヒューストンハーフマラソン (3:09.5/km)
◆自己記録  1時間37分12秒 2013年11月 江東シーサイドマラソン(4分36秒/km)